忙しい人向けのまとめ
- 大阪大学の石谷太教授らがターコイズキリフィッシュを使った研究で、生殖細胞が寿命を制御することを発見。
- オスは生殖細胞を無くすことで平均寿命が13%延び、メスは逆に7%短くなった。
- ビタミンDが寿命延長に重要な役割を果たしていることが確認された。
- 人間にも同様の仕組みが存在する可能性があり、さらなる研究が進められている。
大阪大学の石谷太教授らの研究チームは、寿命が極めて短い魚類であるターコイズキリフィッシュを使った研究において、生殖細胞が寿命を制御していることを明らかにしました。この研究は、脊椎動物の性差による寿命の違いや老化現象の解明に重要な貢献をするものです。
研究の概要
石谷教授らは、ターコイズキリフィッシュを用いて、生殖細胞が寿命にどのような影響を与えるかを調査しました。彼らは、生殖細胞を持つ通常の個体と、遺伝子操作により生殖細胞を作れない個体の寿命を比較しました。その結果、オスは生殖細胞を無くすことで平均寿命が13%延びた一方で、メスは逆に平均寿命が7%短くなることが分かりました。
メスとオスの寿命の違い
研究チームは、メスの生殖細胞が寿命を延ばし、オスの生殖細胞は寿命を短くするメカニズムを調べました。オスの生殖細胞を無くすと、肝臓でビタミンDの合成に関わる遺伝子の働きが高まり、これが筋肉の維持や皮膚のハリを保つ遺伝子の機能を向上させていました。
一方で、卵を作れないメスは、卵が分泌する女性ホルモンが肝臓に作用して有害な酸化ストレスを抑える働きが低下し、寿命が短くなることが分かりました。
ビタミンDの役割
ビタミンDの働きを詳しく調べるために、通常の個体にビタミンDを長期間与えたところ、オスで平均寿命が21%、メスでは7%伸びることが確認されました。この結果は、ビタミンDが寿命延長に寄与する重要な役割を果たしていることを示しています。
人間への応用可能性
人間でも、女性は男性より長生きする傾向があります。北イタリア地域の高齢者を調べた他の研究では、ビタミンDに関わる遺伝子に多くの変化が見られました。石谷教授は、「ヒトでもターコイズキリフィッシュと同じビタミンDの合成に関わる遺伝子があり、同じような仕組みが存在する可能性がある」と述べています。
今後、研究チームは生殖細胞がどのように遺伝子や臓器の機能を制御し、寿命に影響を与えるかを詳しく調べていく予定です。九州大学や群馬大学などとの共同研究で得られた成果は、米科学誌「サイエンス・アドバンシズ」に掲載されました。